岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます。

Yahoo! ブログから引っ越しました。

医療経済学会・基調講演「新型コロナウイルス感染症と経済学」

 遅いご案内になりましたが、4日にオンラインで開催された医療経済学会第16回研究大会(開催校・東京医科歯科大学)のシンポジウムにて、基調講演「新型コロナウイルス感染症と経済学」を行いました。講演スライド(PDF file)を私のサイトに掲載しています。
 現在、行動制限の強化をめぐる議論が起こっていますが、「健康と自由のトレードオフ」が私の講演の大きなテーマになっています。経済学が感染症対策に貢献できる役割の一つに、人々の行動の理解を深めることがありますが、「人々はなぜ(利己的行動ではない)制限の要請に応じるのか」、「人々はなぜ制限の要請に応じなくなったのか(なぜ緊急事態宣言の効果が弱まるのか)」を理解しないと適切な対策は考えられません。
 健康と自由の問題は、昨年に参加した東京大学国際高等研究所東京カレッジ主催連続シンポジウム「コロナ危機を越えて」での他の回(③価値)で宇野重規教授が「安全・経済・自由のトリレンマ」という問題提起をされたことを聞いたときから、どのように経済学で考えるべきかを模索していました。
 経済学で自由を議論するのは、健康と経済のトレードオフを明らかにすることよりもはるかに困難な課題ですが、現状の必要性に鑑み、経済計算論争、コースの定理、社会的選好での分析ツールを基に経済学でできる限りの議論を試みました(不完備契約理論も役立ちますが、講演の時間の都合上、省略しました)。
 後日、スライドを文章化したものを発表したいと考えています。

関係する過去記事
「連続シンポジウム「コロナ危機を越えて」④経済」

Introduction to the special issue “SIR Model and Macroeconomics of COVID-19”

 日本経済学会の機関誌であるJapanese Economic Review誌のVol.72 Issue 4は、“SIR Model and Macroeconomics of COVID-19”という特集となります。前号と同じく、学会の新型コロナウイルス感染症ワーキンググループのメンバーである大竹文雄教授(大阪大学)、宮川大介准教授(一橋大学)、私がゲスト・エディターとして編集を担当しました。エディターによるIntroductionが4日、オンライン公開されました。
 この特集には、SIRモデルの解説論文2本、SIRモデルを用いた日本経済の研究論文3本が収録されます。この記事の投稿時点でオンライン出版されているものは、DOIも示しています[2021年9月22日追記:その後にオンライン出版された文献のDOIを追加しました]。前特集号に引き続き、すべての論文を無料で読むことができます。

Welfare economics of managing an epidemic: An exposition
Yasushi Iwamoto

Structure of epidemic models: Toward further applications in economics
Toshikazu Kuniya

COVID-19 and output in Japan
Daisuke Fujii, Taisuke Nakata
https://doi.org/10.1007/s42973-021-00098-4

The macroeconomics of COVID-19 exit strategy: The case of Japan
So Kubota

Trade-off between job losses and the spread of COVID-19 in Japan
Kisho Hoshi, Hiroyuki Kasahara, Ryo Makioka, Michio Suzuki, Satoshi Tanaka

関係する過去記事
「Introduction to the special issue “The Impacts of COVID-19 on the Japanese Economy”」

Introduction to the special issue “The Impacts of COVID-19 on the Japanese Economy”

 日本経済学会の機関誌であるJapanese Economic Review誌のVol.72 Issue 3[2021年9月5日追記:Issue 4としていたのを訂正しました]は、“The Impacts of COVID-19 on the Japanese Economy”という特集となります。学会の新型コロナウイルス感染症ワーキンググループのメンバーである大竹文雄教授(大阪大学)、宮川大介准教授(一橋大学)、私がゲスト・エディターとして編集を担当しました。エディターによるIntroductionが14日、オンライン公開されました。
 この特集には、以下の6本の論文が収録されます。この記事の投稿時点でオンライン出版されているものは、DOIも示しています[2021年9月5日追記:その後にオンライン出版された文献のDOIを追加しました]。新型コロナウイルス感染症の研究が広く知られるように、学会がすべての論文をオープンアクセスとする措置をとりましたので、無料で読むことができます。

Japan’s voluntary lockdown: Further evidence based on age-specific mobile location data
Tsutomu Watanabe, Tomoyoshi Yabu
https://doi.org/10.1007/s42973-021-00077-9

Effective but fragile? Responses to repeated nudge-based messages for preventing the spread of COVID-19 infection
Shusaku Sasaki, Hirofumi Kurokawa, Fumio Ohtake

Who spent their COVID-19 stimulus payment? Evidence from personal finance software in Japan
Michiru Kaneda,·So Kubota, Satoshi Tanaka
https://doi.org/10.1007/s42973-021-00080-0

Describing the impacts of COVID-19 on the labor market in Japan until June 2020
Taiyo Fukai, Hidehiko Ichimura, Keisuke Kawata
https://doi.org/10.1007/s42973-021-00081-z

Online learning during school closure due to COVID-19
Masato Ikeda, Shintaro Yamaguchi

Measuring business-level expectations and uncertainty: Survey evidence and the COVID-19 pandemic 
Cheng Chen, Tatsuro Senga, Hongyong Zhang
https://doi.org/10.1007/s42973-021-00078-8

関係する過去記事
「新型コロナ危機と財政政策」

「新型コロナ危機と財政政策」

 拙稿「新型コロナ危機と財政政策」が、『経済セミナー増刊 新型コロナ危機に経済学で挑む』(日本評論社)に掲載されました。この増刊号は、対談、インタビュー、19本の記事から構成されていて、経済学が新型コロナウイルス感染症をどのように分析しているのか、を一望するのに便利です。経済セミナー編集部のnote記事「経セミ増刊2021は、『新型コロナ危機に経済学で挑む』」に、この増刊号の紹介があります。
 拙稿の節見出しは、以下のようになります。
1 はじめに
2 先進国の財政政策
3 日本の財政政策
4 大規模な国債発行の影響
5 経済的支援のターゲット効率性
6 負の所得税を実装できる納税インフラ
7 事業者の営業制限と財産権
8 おわりに

関係する過去記事
「『新型コロナウイルス感染症に関する研究』文献リスト(第4版)更新」

「新型コロナウイルス感染症に関する研究」文献リスト(第4版)更新

 いささか旧聞になりますが、日本経済学会新型コロナウイルス感染症ワーキンググループ(以下、WG)による「新型コロナウイルス感染症に関する研究」サイトの文献リストを5月13日に、更新しました。これで3回目の更新になり、前回より57本の文献が追加され、専門論文129本、一般記事55本掲載となりました。このサイトの位置づけについては、「日本経済学会『新型コロナウイルス感染症に関する研究』サイトを開設しました」での説明を繰り返すと、新型コロナウイルス感染症に関する経済学的研究について日本経済学会員の研究成果を紹介し、経済学の知見を新型コロナウイルス感染症対策に活かすための活動をすることを目的としています。

 経済への影響は今後も重要な課題であり、研究は今後も活発になると思われますので、WGのリスト作成作業はもう少し続くことになると思います。当初はWGで文献を収集していましたが、日本経済に絞り込んだ検索が機械化できないため、研究が活発になってくると、手作業では追いつかなくなってきます。そのため、前回の更新から学会員に情報提供をお願いして、文献の収集が進みました。
 今後は、主に会員からの情報提供をもとに更新することになると思います。これまではできるだけ情報提供をしていただけるように、書誌情報は自由形式で入力してもらっていたのですが、書式を整える手間も結構あるので、最初から書式を整えている入力フォームへの変更を予定しています。入力フォームが変更された際には、会員の皆様にはあらためて連絡しますが、それまでは会員向けにお知らせした入力フォームをご利用ください。

 一般記事のリストは、再構成を検討中です。
 一般向け記事の文献リストは、アウトリーチ活動としては重要ですが、学会員が執筆した関係記事をすべて対象にすることは難しいです。一つは、そのようにすると、おそらくWGの処理能力を超えるほど膨大になると考えられます。もう一つは、意見・提言が主体である文献を掲載すると、学会がその内容を公認するような誤解を招きかねません。このような理由から、専門的な研究を土台にした記事というものを目安にして記事を選択していましたが、候補となる記事が増えてくると、目安と照合する作業もWGの手に余るようになってきました。
 文献が増えてくると、単なるリストではなく、増えてきた文献を交通整理して研究の動向を解説する文献が有用になります。一般向けに書かれたものは、WGサイトの一般記事リストの役割をもっと効果的に果たすことができそうです。そうしたもので代替できるようになるといいかもしれません。
 また、広範囲の文献をまとめた書籍も、研究の全体像を把握するのに役立ちそうです。(WGではなく私個人の立場で)一例をあげると、

小林慶一郎・森川正之編『コロナ危機の経済学:提言と分析』(日経BP日本経済新聞出版本部、2020年)
コロナ危機の経済学 提言と分析
森川 正之
日本経済新聞出版
2020-07-18


宮川努編『コロナショックの経済学』(中央経済社、2021年)
コロナショックの経済学
宮川 努
中央経済社
2021-04-21



経済セミナー編集部編『新型コロナ危機に経済学で挑む』(日本評論社、2021年)手前味噌ですが、財政的対応を論じた拙稿も含まれています。

関係する過去記事
「日本経済学会『新型コロナウイルス感染症に関する研究』サイトを開設しました」
http://iwmtyss.blog.jp/archives/1078342824.html

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