岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます。

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第9回マクロコンファレンス

 12月2日(日)に慶応大学で開催された,9th Macroeconomics Conferenceに出席し,山田知明先生(立正大学)の論文の討論者を務めました。
 コンファレンスの案内は,下記のURLで。
http://www.econ.keio.ac.jp/staff/masaya/ja/conf/9thmacroconf.html

財政再建は誰も望まない?

 現状で2011年度の基礎的財政収支を黒字化する目標は,財政再建の小休止を意味する。
 財政再建の手綱を緩めないとすれば,
(A) 歳出削減のペースを速める(歳出歳入一体改革のもとで,5年をかけて予定されている歳出削減をもっと早期に実施する,あるいは新規の歳出削減を追加する)
(B) 増税する(例えば消費税を2%引き上げれば,その時点で基礎的財政収支黒字化の目標は達成される)
の2つの手段のいずれか,または両方を講じなければならない。政府・与野党はいずれも,このような考え方はとらないようである。
「成長重視派」は,成長による自然増収で目標達成を図ろうとしている。ごく短期に成長の効果が出るシナリオが現実的でないことから,成長の効果が発揮するまで時間がかかるシナリオをとらざるを得ず,猶予期間が与えられる方が望ましい。かりに目標年度が2009年度に改訂されれば,上げ潮路線の戦略は破綻する。
 民主党の中長期の財政運営に対するスタンスは明確ではないが,前倒しは考えていないようである。目標年度を2009年度にすると,かりに政権交代がなったときに自らの政策実行を大幅にしばることになる。このような事態を望まないことは容易に予想できる。
 前倒しを考えるとすれば,「財政再建派」であろう。もっとも強硬な考え方として,2009年度に消費税を増税する主張があるが,その根拠は基礎年金の国庫負担引き上げなど,社会保障の安定的な財源を確保するためであり,基礎的財政収支の目標が同時に達成される(歳出削減の手綱を緩めないという条件のもとでだが)ことはあまり強調されていない。
 こうして,従来通りの財政収支の改善スピードを求める声は,どこからも起こらなかったといえる。

財政再建は一休みします(図解)

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 国・地方の基礎的財政収支の実績と見通しをグラフ化すると,財政収支の改善ペースが鈍化することが一目瞭然である。
 出所は,2006年度までは2月8日の財政制度等審議会財政制度分科会合同会議資料2,2007年度以降は10月17日の経済財政諮問会議民間議員提出資料である。2008年度以降は,14.3兆円歳出削減・新成長経済移行シナリオによる。

財政再建は一休みします

 11月19日に,財政制度等審議会の建議が財務大臣に手交された。
 冒頭に「大胆な財政構造改革の断行に待ったなしで取り組む必要がある」と書かれているが,現在の政府の計画では,こと財政収支の改善ペースで見ると,財政再建は一休みになる。
 政府が2011年度までに黒字化を目指す国・地方の基礎的財政収支の赤字(対GDP比)は2003年度の5.6%から2007年度の0.9%まで,年あたり1%超のペースで改善してきた。2011年度に赤字を解消するとすれば,0.9%の改善に4年をかけることになる。大幅なペースダウンだ。
 当初は,基礎的財政収支の目標は,1年当たり0.5%程度のペースで進むという想定のものとで設定された。大事なことは政府がしっかりと収支改善努力を続けていくことであり,財政収支自体は循環要因に左右されるので,目標達成年度は前後にずれることがあり得る。実際に目標年度は,これまで「2010年代初頭」,「2012年度」,「2011年度」と変化してきた。2012年度から2011年度に変更されたのは,当初想定以上の収支改善があったことを踏まえたからである。
 今年初めにまとめられた「進路と戦略」で,目標年度が2011年度と変更がなかったのは,方針が変更されたわけではなく,これまでの考え方を適用しないという,重要な方針転換がされている。もし,従来通り1年当たり0.5%のペースで改善することにすれば,2009年度(どんなに慎重に見ても2010年度に)に目標年度を前倒ししなければいけない。
 債務残高を安定的に引き下げるという,その先の目標は堅持しているから,財政再建をあきらめたわけではないが,財政収支の改善ペースを落とすことが予定されていることは,財政再建を小休止することを意味する。
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