日本のGDPに関する内外価格差指数(購買力平価と為替レートの比,OECD全体を100に基準化)は,EurostatとOECDによる1999年調査の143から2005年調査の114まで20%下がった。
 2月29日に2005年の購買力平価調査の報告書「Purchasing Power Parities and Real Expenditures: 2005 Benchmark Year, 2007 Edition」が刊行された。またWebで提供されるOECD.Statから詳細なデータを入手可能である。
 ここで新しく発表されたデータをもとに,1999年調査と2005年調査の内外価格差指数を需要項目別に比較してみよう。ただし,こういう動きを見ることは,計数に計測誤差が含まれていると,真の値の動きを見ているのか,誤差の動きを見ているのかわからなくなるおそれがあることに注意して,一定の幅をもってとらえる必要がある。
 1999年→2005年(変化率)のように示すと,
 153→115(-25%) 現実個人消費(家計による消費)
 132→111(-16%) 現実集合消費(政府による消費)
 129→115(-11%) 総固定資本形成
 163→130(-20%) 在庫品増加
となる。
 1999年に割高だった消費財,在庫の価格が大きく低下して,全体でのばらつきが平準化する方向に動いている。国内の価格の動きだけを見ると投資財価格の低下が大きいが,上の指数は外国との比較のものなので,外国での投資財価格の低下も大きかったということがいえる。日本と外国の価格の比の,2時間点の比を,違った財で比べることをしており,比べる作業が3つ重なっているので,ややこしい。
 現実個人消費の目的別分類も公表されている(分類は,『国民経済計算』フロー編・付表13に対応する)。
 215→185(-14%) 食料・非アルコール飲料
 125→88(-30%) アルコール飲料・たばこ
 157→136(-13%) 被服・履物
 169→120(-29%) 住居・電気・ガス・水道
 174→139(-20%) 家具・家庭用機器・家事サービス
 102→73(-28%) 保健・医療
 143→118(-17%) 交通
 116→115(-1%) 通信
 144→101(-30%) 娯楽・レジャー・文化
 117→111(-5%) 教育
 190→130(-32%) 外食・宿泊
 171→116(-32%) その他
となっている。
 細分化していくと調査対象品目が少なくなるので,推計誤差がさらに心配になる。ここで大まかな傾向をつかんで,さらに各国の物価指数を参照して確認していく作業が必要であろう。これは論文を書く作業になるので,ここでは大まかな傾向をつかむだけにとどめる。
 1999年から2005年の指数の低下は,特定の財に起こったのではなく,広い範囲に共通して見られたといえる。個別財での問題を解決して内外価格差を解消したような動きではないような印象を受ける。こうした動きを生じさせる要因としては,(1)輸出財の価格が上昇して為替レートが円安に動く,(2)為替レートが投機的な動きで円安に動く,(3)流通・運輸業のコスト低下が生じる,などが考えられる。
 1999年時点で内外価格差指数が高かった項目のうち,「住居・電気・ガス・水道」,「外食・宿泊」,「その他」は,低下率が大きい。一方で,「食料・非アルコール飲料」は低下率が14%で,一段と高価格が引き立つ形となっている。農業が相変わらず一番の課題のように見える。
 低下率が一番小さいのは,「通信」である。わが国のデフレーターは下がっているのだが,外国でも価格低下が起きていることになる。
 2005年で割安な財に目を向けると,まず「アルコール飲料・たばこ」。とくに「たばこ」の指数が低いが,これは決してほめられたことではない。「保健・医療」は質の評価が難しいので幅をもって見る必要があるが,額面通りに受け取ると,OECD諸国では低価格になる。経済諮問会議のかねてからの主張は,効率化で医療・介護サービスの供給コストを低下させることであるが,内外価格差指数から見ると難事業であり,他にやるべきことがあるだろうということになる。

(参考)
Amazon.comでも「Purchasing Power Parities and Real Expenditures: 2005 Benchmark Year, 2007 Edition」が見つからなかったので,OECD Online BookshopでのURLを載せておきます。
http://www.oecd.org/bookshop?pub=9789264026766

OECD.Stat
http://www.sourceoecd.org/database/OECDStat

(関係する過去記事)
「1人当たりGDP 日本は18位に後退」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/1027049.html

「内外価格差の解消がもたらしたもの」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/1197471.html

「【お薦め】SourceOECD」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/266985.html