先進国のなかで日本はたばこが飛び離れて安い。
 たばこ産業の生産性が高いわけではなく,たばこ税が低いからである。3月4日に日本学術会議が出した要望「脱タバコ社会の実現に向けて」では,たばこの税負担が欧米の2分の1から5分の1程度と低いことを指摘し,たばこ税の大幅な引き上げを提言している。たばこ税に限らず,日本の喫煙規制の遅れは,「たばこ産業の健全な発展を図る」財務省が無益有害な横槍をいれることが元凶である。
 たばこ価格の国際比較データとして通常用いられるのは,厚生労働省の「健康ネット|最新たばこ情報」で公開されている,2002年5月31日現在の調査結果である。

http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd050000.html

 「内外価格差の縮小・詳論」で紹介したEurostatとOECDの購買力平価調査でも,55か国のたばこ価格の比較が可能である。全体の様子は,健康ネットでのデータと同様である。同種のたばこの価格を調べる必要があるので,たばこにしぼった調査の方がより精度が高いと考えられるが,調査時点が2005年と3年新しい,CIS諸国など他の国の情報が得られる,といった価値もあるので,ここで紹介する。
 数値は内外価格差指数(購買力平価と為替レートの比)で,OECD全体を100に基準化している。数値が大きいほど,他国よりも割高であることを意味する。
 日本の指数は61と,先進国から飛び離れて低い。

269 ノルウェー
236 英国
226 アイスランド
220 アイルランド
173 ニュージーランド
167 カナダ
163 オーストラリア
160 フランス
138 スウェーデン
137 デンマーク
136 ドイツ
126 フィンランド
122 オランダ
120 スイス
118 オーストリア
118 ベルギー
114 キプロス
112 イタリア
111 米国
101 マルタ
98 ルクセンブルク
90 イスラエル
83 ギリシャ
80 ポルトガル
77 クロアチア
76 スペイン
68 スロベニア
66 ハンガリー
63 韓国
61 日本
59 チェコ
59 トルコ
57 スロバキア
49 ポーランド
47 エストニア
40 メキシコ
37 リトアニア
37 アルバニア
36 ブルガリア
35 ボスニア=ヘルツェコビナ
31 ラトビア
31 ルーマニア
30 グルジア
29 モンテネグロ
27 マケドニア
26 セルビア
21 アルメニア
20 アゼルバイジャン
19 タジキスタン
18 ベラルーシ
16 ロシア
15 カザフスタン
15 キルギスタン
15 ウクライナ
14 モルドバ


(付記)
 以下は,「たばこ事業法」の目的を記した第1条である。非常に邪悪な目的であるとしかいいようがない。

(目的)
第一条 この法律は、たばこ専売制度の廃止に伴い、製造たばこに係る租税が財政収入において占める地位等にかんがみ、製造たばこの原料用としての国内産の葉たばこの生産及び買入れ並びに製造たばこの製造及び販売の事業等に関し所要の調整を行うことにより、我が国たばこ産業の健全な発展を図り、もつて財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。

(参考)
日本学術会議要望「脱タバコ社会の実現に向けて」
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-t51-4.pdf