政府の債務残高について2007年の記事で整理していたが,その後の資料に変化があったので,あらためて整理し直す。構成も少し変更した。

(A 国債及び借入金並びに政府保証債務残高)
 国の債務をもっとも広くとらえているのは,財務省から3か月に1度発表されている「国債及び借入金並びに政府保証債務残高」(http://www.mof.go.jp/1c020.htm に掲載)である。2009年6月末では,国債及び借入金が860兆円,政府保証債務残高が46兆円となっている。
「『国債及び借入金並びに政府保証債務現在高』に関する補足説明」(http://www.mof.go.jp/gbb/2106hosoku.pdf )に,後述の「国と地方の長期債務残高」との相違が説明されている。

(B 総政府債務残高)
 (A)から政府保証債務を除いた,国債と借入金合計が,国の債務残高の代表的指標になる。国際通貨基金(IMF)の基準によって公表される債務残高指標である。同時に,OECDの発行する統計集『Central Government Debt』に総政府債務(total government debt)として公表される。また,1872年からの長期時系列が総務省統計局の「日本の長期統計系列」(http://www.stat.go.jp/data/chouki/index.htm )から利用できる。昨日のブログ記事「景気との戦争(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/30210307.html )でも,この指標を用いた。
 さらにその内訳は,財務省から「国債・借入金残高の種類別内訳」(http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/siryou/index.htm に掲載)として公表される。2009年度補正予算を前提とすると,2009年度末で924兆円になる見込みである。

(C 国と地方の長期債務残高)
 (B)から財政投融資特別会計債(財投債),政府短期証券をのぞいたものは,財務省から「国の長期債務残高」として公表される。
 総務省は,地方債残高,公営企業債残高(普通会計負担分),国の交付税特別会計借入金残高(地方負担分)の合計を「地方財政の借入金残高」(http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei.html に掲載)として公表している。
 両者を合計したものが,財務省が公表している「国と地方の長期債務残高」となる。ただし,地方の負担で返済することになる交付税特別会計借入金は重複計上とならないように,ここでの国の長期債務からは除外される。2009年度補正予算を前提とすると,2009年度末で国と地方を合わせた長期債務残高は816兆円になる見込みである。国の長期債務は619兆円で,うち普通国債が592兆円である。地方の債務は197兆円である。
「国の長期債務残高」,「国と地方の長期債務残高」,「国債・借入金残高の種類別内訳」は,財務省のサイト(http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/siryou/sy_new.htm )に掲載される。

(D 公債等残高)
 経済財政諮問会議において財政運営の指標とされている債務残高は「公債等残高」と呼ばれ,(C)から交付国債,出資国債等,交付税特別会計以外の特別会計借入金,公営企業債がのぞかれる。
 公債等残高は,毎年初に公表される中期方針の参考資料(内閣府作成)に掲載される。今年のものは「経済財政の中長期方針と10年展望進路と戦略」(2009年1月16日,
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2009/0116/item2.pdf )である。

 以上の関係を表にまとめると以下のようになる。色のついたものが,各指標に含まれることを示す。2009年度当初予算を前提にした2009年度末の見込み値も示している(政府保証債務は2009年6月末値)。

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 債務残高について,よく似た概念が複数流通することは混乱を招く。以前に比べるとだいぶ整理されてきたが,諮問会議は「国と地方の長期債務残高」を使うようにして,もっと整理するべきであろう。(D)がなくなれば,上の表は一段と簡素化される。その後は,データの利用者の方で,国と地方,長期債務と総債務との区別を意識しながらデータを見ることが必要だ。
 その先には『国民経済計算』との調和という課題があるが,機会があればあらためて論じたい。


(参考)
「衆議院議員滝実君提出経済モデルによるシミュレーションに関する質問に対する答弁書」
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b166062.htm

(関係する過去記事)
景気との戦争

債務残高の指標
(今回の記事は,この記事を更新するものです)