野党は予算を作らない。予算を作るのは,政権党の責任である。
 民主党政権が最初から携わるものとして初めて概算要求基準が26日,閣議決定された。
 昨年までとは予算編成のプロセスが大きく変わった。経済財政諮問会議で「骨太の方針」が作られた時期には,政府が何をしたいのかが首相主導により「骨太の方針」で示されてから,概算要求基準が決められていた。今回の概算要求基準では,「元気な日本復活特別枠」は,マニフェストの実現,デフレ脱却・経済成長に特に資する事業,雇用拡大に特に資する事業,人材育成、国民生活の安定・安全に資する事業と何でもあり。予算の削減は一律1割と,政権が何をやりたいのかがまったく見えてこない。
 経済財政諮問会議は,いまも内閣府設置法で設置することとされている組織である。諮問会議は違法に廃止され,予算編成は密室で決められている。概算要求基準では,特別枠が「1兆円を相当程度に超える」等,多くの懸案が玉虫色の決着となっており,密室でも決められてない状態となっている。いかに議論が詰められていないかは,昨年の自公政権時の概算要求基準の文尾と比較してみればわかる。昨年は「行う」,「実現する」という表現が目につくが,今年は「全力で取り組む」,「全力をあげる」だ。

 昨年の衆院選マニフェストには,新規施策の財源の確保策についても記されていた。「【政権選択選挙】民主党マニフェストの財源」で指摘したような問題点はあったが,一応は政権を担当する責任を示したものであった。予算はつけるよりも削ることがはるかに難しい。既存の歳出削減による財源の確保がなければ,マニフェストの新規施策は実現できない。ところが,概算要求基準には,歳出削減の具体策はない。各大臣が「査定大臣」になって歳出削減に取り組むそうだが,マニフェストでの歳出削減を実現する責任者は誰なのだろうか? 結局,マニフェストは単なる机上の空論だったことが露呈した形だ。例えば人件費は,衆院選マニフェストでは2割削減としていたが,概算要求に具体的な数値目標はない。「各大臣において抑制・削減に取り組むと同時に、政府全体でも抑制・削減に全力で取り組む」とだけ書かれている。

 復活した民主党政策調査会は,特別枠を2兆円とするよう要求するなど,歳出削減は「査定大臣」に任せ,族議員化する兆しを見せている。官邸は官邸主導の「演出」に腐心していることが意味するように,実際に主導するのは財務省になるだろう。かつての,族議員対財務省,という図式が復活しそうだ。
 自民党の族議員は長年の政権経験で,落とし所をわきまえていた。それは傍目には官僚依存とも見える。民主党の「政治主導」による予算編成は,懸案が決められなかった昨年末の混乱が再現しそうな予感を抱かせる。財務省主導がせめてもの幸い,というのは不幸な状態である。
 政治家個人は,自分の思う政策を実現させたい,という熱い思いで動いているのだろう。だが,一般会計・特別会計合わせての業務費用124兆円(2008年度,『国の財務書類』)になる巨大組織にはさまざまな思惑が働く。それを整理して,予算に落とし込むまでの様々な工夫が長年にわたって積み重ねられている。政治主導で簡単に予算が組める,とそれらを安易に取り除いたことで,結果的に退行した予算編成プロセスが進行している。

(参考)
「平成23 年度予算の概算要求組替え基準について」(2010年7月27日閣議決定)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/h23/sy220727.pdf

「平成20年度 国の財務書類」(財務省)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/fs/2010.htm

(関係する過去記事)
【政権選択選挙】民主党マニフェストの財源

『ままごと』と『まつりごと』の間