今日の授業は特別仕様で,与謝野馨大臣をお迎えした。
 内外の著名な政策担当者が東京大学公共政策大学院で講演される際には,関係する授業と重ねて「公共政策セミナー」と題して開催することが多く,授業担当教員がセミナーの準備をする。与謝野大臣の講演は,私の担当となった。セミナーの概要は後日,公共政策大学院のサイトで公開している(http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/seminar/index.htm )が,学生を対象にした催しであることから,学外には事前の案内はしていない。今回は,社会保障と税の一体改革案がまとまった直後ということもあって,カメラ5台を含む多数の報道陣も入る盛況だった。
 今回のセミナーの内容は報道におかませして,ここでは現場担当者としての裏話をちょっとだけ。真面目なところと真面目でないところが交じっているので,気楽に読み流してください。

 準備はだいぶ前から始まった。事前の調整で大臣のスケジュールは押さえたものの,政治情勢が不透明になってきて,中止もあり得るという状況で準備を進めた。無事に開催できて何よりだった。
 大臣が国会に呼ばれれば,もちろん国会が優先。今日は参議院の予算委員会と重なったため,直前に複数のシナリオを準備。大臣が来ない,前半だけ出席,後半だけ出席,のシナリオも用意するなど,裏方は大変。
 ついでだから,「想定外」の事態の対応も私は勝手にいろいろと妄想。会場の爆破予告,大地震,隕石またはギャオスの落下,等。

 昨日の衆議院の予算委員会は全閣僚出席。今日の参議院の予算委員会は質問者が要求する大臣が出席。国会日程が1日後ろにずれていたらアウトだった。
 前日に,質問者が出席を要求する大臣が決まってくる。セミナー前日夕刻には大臣は出席できそうということだったが,当日の朝でも事態は動いていて,はじめは若干の遅刻という連絡だった。結局,国会日程との衝突がなくなり,大臣にはフルに出席していただくことができた。

 要人の来訪では,セキュリティにも気を配る。大臣の動線は事前にチェック。大臣にはSPがつき,地元の警察署からも警察官が派遣される。今日は何事もなく日程が終了し安堵。

 田辺国昭公共政策大学院長が大臣を会場玄関で出迎える。先に大臣を応接室に通して後から入ると,大臣が辞任する事態になりかねないので,この対応が無難か。サッカーボールを蹴りますか,と当方の事前打ち合わせで質問したが,あっさり無視された。
 私も田辺院長と一緒に玄関で出迎える予定だったが,直前のSPとの打ち合わせで変更。SPの体格が良くて,玄関からの一行全員がエレベータに乗れないことが判明したため。

 私は先週,舌を噛んでしまった口内炎で舌を動かすと痛くて,ろれつが回らなかった。だいぶ回復したが,若干痛みが残っているなか,冷や汗ものの議事進行。
 そんなところがテレビに映ったら恥ずかしいので,かぶりものをしてもいいかな,と事前打ち合わせでささやいたが,あっさり無視された。

 セミナーの終わりに,公共政策大学院から講演者に記念品を贈呈するのが恒例。講演の模様を撮影した写真を漆の額に収めたもので,海外の講演者にはとくに喜ばれている。

 公共政策大学院は予算基盤が脆弱なため,万事が綱渡り操業である。スタッフ1名で今回のようなセミナーの諸々の準備を担当するため,てんてこ舞いになる。こちらの体制が整わないために,講演の希望を残念ながらお断りすることも多々ある。人的・物的資源が充実していれば,こうした機会を増やすことができるのに,というのが悩みである。

 資金獲得の努力は日々していますが,どこかの大金持ちがどんと寄付していただければいいな,という虫の良い話は教員同士の会話でよく出ます。
 東京大学公共政策大学院への寄付については,下記のページに説明があります。
「公共政策大学院へのご支援のお願い」
http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/contribution/index.htm

(参考)
「与謝野馨(社会保障・税一体改革担当大臣)による第64回公共政策セミナーが開催されました」(東京大学公共政策大学院・2011年7月7日)
http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/news/2011/07/news20110707.htm