自民党の安倍晋三総裁は17日,公共事業の財源をまかなうために「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出ていく」と発言したと報道されている。報道では,これを日銀による国債の引き受けとしている。「買う」と「引き受ける」にはだいぶ差があるが,財源をまかなうために政府が強制するとなれば,買うにせよ引き受けるにせよ,財政規律の崩壊につながる危険な行為である。
 日銀の国債引き受けについては,いくつかのブログ記事に書いてきたが,そもそも押さえておくべきは,以下のことである。

 日銀が国債を直接引き受けることを禁止しているのは財政規律である。財政出動も金融緩和も,財政規律を守ることを前提とした安定化政策である。日銀の国債引き受けを金融緩和の文脈で語ることは,経済政策を根本的に理解していない。

(参考)
「国債の日銀引き受けについて」(岩本康志)
(経済社会構造に関する有識者会議 財政・社会保障の持続可能性に関する「経済分析ワーキング・グループ」提出資料,2011年10月12日)
http://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/k-s-kouzou/shiryou/wg1-1kai/pdf/4.pdf

(関係する過去記事)
財政法第5条(日銀の国債引き受け)について

ハイパーインフレーションの理論

復興国債の日銀引き受けはそもそも財源か?

国債引き受けと国債買いオペの比較