8月14日の日本経済新聞朝刊の経済教室欄に拙稿「予算編成見直し 臨機応変に」が掲載されました。2018年から国立国会図書館に出向していた期間は国会職員の身分であり、個人の意見による発言を控えていましたので、久しぶりの日本経済新聞への寄稿になります。
 拙稿は、「財政をどうするのか」シリーズの第2回になります。7月31日に「中長期の経済財政に関する試算」がまとめられたことを受けて、中長期視点から財政運営を考えるという趣旨の依頼でした。
 第1波の流行が深刻な時期には、感染症対策と感染症の影響への対応のため大幅な財政出動が必要とされましたが、この依頼を受けた時期は新規感染者も重症者も落ち着いてきて、感染症を抑え込んで経済も財政も通常に戻る見通しでの課題を論じることが想定されていたのですが、感染の再拡大によって問題設定が変わりました。将来を見通すことが不透明ななかで、どのように中長期の戦略を描くか、どのように来年度予算と今年度補正予算を編成していくか、を主題にしています。
 理論的支柱となる「リアルオプション」は物理的に不可逆的な意思決定(ある用途に投資した設備は他用途に転用できない)を想定していますが、予算を政治的に不可逆的な意思決定に見立てて、意思決定を遅らせることの価値を予算編成の議論に導入しています。行政の計画は時間をかけて準備した方がいいので、早めの準備と遅めの決定を組み合わせることは実は非常に難しい作業になります。予算編成の関係者には大きな苦労が生じますが、ウイズ・コロナ時代の避けて通れない課題です。