[2020年11月30日追記:題名が「新型コロナウイルスに関する研究」になっていましたが、正しいサイト名に訂正しました。]
 日本経済学会は13日、「新型コロナウイルス感染症に関する研究」サイトを開設しました。サイトを作成した新型コロナウイルス感染症ワーキンググループ(以下、WG)は、新型コロナウイルス感染症に関する経済学的研究について日本経済学会員の研究成果を紹介し、経済学の知見を新型コロナウイルス感染症対策に活かすための活動をすることを目的としています。サイトでは、これまで公開されている一般向け記事と専門的な研究論文のリストを公開しています(文献収集の目安についてはサイトをご覧ください)。WG委員長として、このサイトの立ち上げに関わっていましたので、サイトの位置づけについて簡単に説明します。
 現在、日本では主として医学系の学会が新型コロナウイルス感染症の関連情報をウェブ上で紹介しています。国立国会図書館リサーチ・ナビに、これらのサイトへのリンクの一覧があります。医学系の学会では研究以外の情報も多数掲載してありますが、研究の情報にしぼった経済学版が、このサイトになります。
 経済学分野で関係する内外の取組を見てみると、英語の研究論文では、欧州のCentre for Economic Policy Research(CEPR)がCovid Economicsという電子ジャーナルを発行しています。通常の査読雑誌と違うのは、投稿されたディスカッション・ペーパー(プレプリント。以下、DP)を48時間で掲載の可否のみ判断して、掲載している論文自体は未公刊の扱い(後で他の雑誌に投稿してよい)という扱いをとっています。この過程によって、ある程度のスクリーニングをしたDPのポータルの役割を果たしています。
 米国のNational Bureau of Economic Research(NBER)が発行するWorking Paper Seriesは学界への影響力が大きく、新型コロナウイルス感染症に関係するDPもすでに多数刊行しており、そのリストを提供しています。
 一般向けの記事では、CEPRのVoxEUに、関係する論考が多く集まっています。
 もちろん、その他の場所でも数多くの文献が公開されています。
 学会の活動としては、欧州のEuropean Economic Associationは、新型コロナウイルス感染症の研究計画を登録するシステムを運用しており、世界でどのような研究が計画されているかを一覧できます。日本では、東京経済研究センター(TCER)がこれに対応する取組をしていますが、一般には公開されていません。
 CEPR、NBER、TCERは、それ自体が研究をする研究機関ですが、学会は会員が研究成果を発表する場であり、主体的に研究をする機関ではありません。そのため、研究機関と学会は、おのずと役割が違います。
 内外の学会と研究機関の活動状況を見て、WGは、クリエーターではなく、文献情報を収集して提供するキュレーターと、研究を活性化させるファシリテーターとしての活動を目指すことにしました。
 当初公開版に掲載した文献は、WGの文献収集班(岩本康志、大竹文雄、川田恵介、久保田荘、宮川大介)が10月5日までに収集したものです。今後も新しい研究が発表されると思われますので、文献リストは機会を見て拡充する予定です。