財政投融資のうち,財政融資資金は償還確実性を精査してリスクをとらない建前であるのに対して,産業投資はリスクをとるのが役割である。このリスクの最終的な負担者は国民であり,国民にどのように説明するかが大事であるが,IR資料となる「財投レポート」をはじめとする,多くの資料ではそのことがよく見えてこない。
「埋蔵金探訪(4):公営企業金融公庫」で,省庁別財務書類に産業投資の対象機関の純資産額の一覧表があることを紹介したが,これは産業投資のリスクを分析する手がかりになり得る。そこで,2005年度末で純資産額/資本金の比率が低い機関の一覧表を作成してみた。なぜこれら機関の資本が毀損しているのか,産業投資のリスクはどうなっているのか。これを足がかりにして,世論の関心が高まることを期待したい。
財政制度等審議会にある公会計基本小委員会の専門委員をしており,公会計改革には若干の関わりがあるので,今回はその活用方法を提案してみた。
(参考)
2005年度末の産業投資勘定の出資金の評価は決算書と省庁別財務書類で,以下のようになっている。
決算書 3.59兆円(取得原価で評価)
JT・NTT株 0.31兆円
その他機関 3.28兆円
省庁別財務書類 7.62兆円
JT・NTT株 4.75兆円(市場価格で評価)
その他機関 2.87兆円(取得原価に強制評価減適用)
ちなみに,その他機関の出資分に相当する純資産額の合計は7.28兆円である。
「産業投資特別会計(産業投資勘定)平成17年度財務書類」は下記のURLに掲載されている。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kaikei/zaimu/190330.htm
(関係する過去記事)
「埋蔵金探訪(3):産業投資特別会計(産業投資勘定)」