民主党マニフェストでは恒久的財源と一時的財源の区別がついていない。
政策実施のための財源として,「埋蔵金」の活用と政府資産の計画的売却で5兆円を確保することを予定しているが,これは毎年持続するとは考えられないので,一時的財源である。マニフェストに盛られた16.8兆円の新規政策は恒久的政策であり,これに一時的財源5兆円と,恒久的財源となる歳出削減と増税の合計11.8兆円を充てる形となる。本来は恒久的政策には恒久的財源を充てるべきであり,一時的財源を充てると将来に財源不足に陥る。
民主党マニフェストでは,今度の衆院選で政権をとった場合の衆議院任期中に編成される2010~2013年度予算での,実現を目指す政策の予算規模と実施時期がおおよそ明記されている。このように政策構想の詳細を公表し,後で実績の評価を受けようとする姿勢は大いに評価したい。自民党もこれにならうべきだ。
さて,マニフェストの4年間は政策の財源がきちんと確保される形で記述されているが,ここで問いたいのは,5年後の2014年度に何が起きるかである。そこで埋蔵金が尽きていると(本当はもっと早くに尽きる可能性が高いが),5兆円の歳入不足になる。今回のマニフェストを超えての歳出削減はもはや困難だろうから,これを埋めるには増税することになるだろう。5兆円は消費税だと2%分になる。つまり,埋蔵金が続かなくなったところで消費税2%相当の増税をしなければいけないことが,今回のマニフェストに暗黙のうちに含まれていると考えられる。この増税は高齢化による社会保障費の自然増をまかなう増税や,財政収支改善のための増税とは別物で,民主党の新規政策をまかなうために必要な増税である。そのことを念頭に置くと,マニフェストの期間中に増税が現れないように,当面は埋蔵金を充てて増税の先送りを図っているとも解釈できる。
公平を期すために付言すると,現政権も同様のことをしている。今年度から基礎年金の国庫負担が給付額の2分の1に引き上げられたが,そのための安定財源を税制改革で確保すると以前に決めていたところを,税制改革を先送りして,2年間は埋蔵金でしのごうとしているのである。
与党も野党もこういうことはすべきでない。しかし,選挙戦ではそういう方向に議論が進まない可能性が高い。かりに自民党が「民主党は消費税2%相当の増税を先送りして,マニフェストから隠している」と批判すると,「基礎年金国庫負担の財源確保を先送りしている与党にそんなことを言われる筋合いはない」と切り返されそうである。このやりとりでは,与党がしているから野党もしていい,という話になってしまう。
そうではなく,民主党マニフェストがどう改善されるべきかを議論すべきだ。マニフェストに盛られた政策を5兆円削減して,恒久的財源の規模に合わせるべきだろう。すでに「【政権選択選挙】民主党の道路政策」で指摘したように,自動車関係諸税の暫定税率の廃止(2.5兆円)をやめることで,まず半分が実現できる。
(参考)
民主党の政権政策Manifesto2009
http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2009/index.html
(関係する過去記事)
「【政権選択選挙】民主党の道路政策」
政策実施のための財源として,「埋蔵金」の活用と政府資産の計画的売却で5兆円を確保することを予定しているが,これは毎年持続するとは考えられないので,一時的財源である。マニフェストに盛られた16.8兆円の新規政策は恒久的政策であり,これに一時的財源5兆円と,恒久的財源となる歳出削減と増税の合計11.8兆円を充てる形となる。本来は恒久的政策には恒久的財源を充てるべきであり,一時的財源を充てると将来に財源不足に陥る。
民主党マニフェストでは,今度の衆院選で政権をとった場合の衆議院任期中に編成される2010~2013年度予算での,実現を目指す政策の予算規模と実施時期がおおよそ明記されている。このように政策構想の詳細を公表し,後で実績の評価を受けようとする姿勢は大いに評価したい。自民党もこれにならうべきだ。
さて,マニフェストの4年間は政策の財源がきちんと確保される形で記述されているが,ここで問いたいのは,5年後の2014年度に何が起きるかである。そこで埋蔵金が尽きていると(本当はもっと早くに尽きる可能性が高いが),5兆円の歳入不足になる。今回のマニフェストを超えての歳出削減はもはや困難だろうから,これを埋めるには増税することになるだろう。5兆円は消費税だと2%分になる。つまり,埋蔵金が続かなくなったところで消費税2%相当の増税をしなければいけないことが,今回のマニフェストに暗黙のうちに含まれていると考えられる。この増税は高齢化による社会保障費の自然増をまかなう増税や,財政収支改善のための増税とは別物で,民主党の新規政策をまかなうために必要な増税である。そのことを念頭に置くと,マニフェストの期間中に増税が現れないように,当面は埋蔵金を充てて増税の先送りを図っているとも解釈できる。
公平を期すために付言すると,現政権も同様のことをしている。今年度から基礎年金の国庫負担が給付額の2分の1に引き上げられたが,そのための安定財源を税制改革で確保すると以前に決めていたところを,税制改革を先送りして,2年間は埋蔵金でしのごうとしているのである。
与党も野党もこういうことはすべきでない。しかし,選挙戦ではそういう方向に議論が進まない可能性が高い。かりに自民党が「民主党は消費税2%相当の増税を先送りして,マニフェストから隠している」と批判すると,「基礎年金国庫負担の財源確保を先送りしている与党にそんなことを言われる筋合いはない」と切り返されそうである。このやりとりでは,与党がしているから野党もしていい,という話になってしまう。
そうではなく,民主党マニフェストがどう改善されるべきかを議論すべきだ。マニフェストに盛られた政策を5兆円削減して,恒久的財源の規模に合わせるべきだろう。すでに「【政権選択選挙】民主党の道路政策」で指摘したように,自動車関係諸税の暫定税率の廃止(2.5兆円)をやめることで,まず半分が実現できる。
(参考)
民主党の政権政策Manifesto2009
http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2009/index.html
(関係する過去記事)
「【政権選択選挙】民主党の道路政策」