岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます。

2009年11月

Yahoo! ブログから引っ越しました。

第8回現代経済政策研究会議

 11月28日は,淡路夢舞台国際会議場で開催された,関西社会経済研究所主催の第8回現代経済政策研究会議で,福井唯嗣先生(京都産業大学)との共著論文「医療・介護保険財政モデル(2009年9月版)について」を報告しました。先月に大阪大学に移籍した西村幸浩先生に討論者の労をとっていただきました。
 プログラム委員長は大阪大学の赤井伸郎先生。会議のテーマは「日本財政の課題:税制・地方財政・社会保障政策のあり方」で,関東と関西の財政学者がたくさん集まった会議でした。行政刷新会議の事業仕分けが世間の注目を集めていますが,こちらの会議には仕分け人が3人参加していました。
 この会議の前身である計量経済学研究会議(六甲コンファレンス,琵琶湖コンファレンス)と合わせて,関西では伝統と権威のある研究会であり,関西の多くの研究者は私も含めて,この会議に育ててもらっています。私は,駆け出しの研究者時代にはじめて招待されて以来,何度か参加させていただきましたし,2000年の「社会保障」をテーマとした会議では,オーガナイザーを務めたことがあります。

(参考)
現代経済政策研究会議 開催記録(財団法人関西社会経済研究所)
http://www.kiser.or.jp/ja/others/backno/support_backno03.html

「医療・介護保険財政モデル(2009年9月版)について」(岩本康志・福井唯嗣)
https://iwmtyss.com/HLIModel/Manual2009-09.pdf

第38回計量経済学研究会議
https://iwmtyss.com/memo/Dai38KaiKeiryoKeizaigakuKenkyuKaigi.html

(関係する過去記事)
医療・介護保険財政モデル(2009年9月版)について

『人口減少と日本経済』

 京都産業大学の福井唯嗣先生との共著論文「持続可能な医療・介護保険制度の構築」が収録された津谷典子・樋口美雄編『人口減少と日本経済』が日本経済新聞出版社から刊行されました。

(関係する過去記事)
日本学術会議シンポジウム

『二重の負担』があるから積立方式に移行できないわけではない

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「医療費増,経済にプラスも」

 10月5日の日本経済新聞朝刊に寄稿した拙稿「医療費増,経済にプラスも」が,経済産業研究所のサイトに掲載されています(http://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/iwamoto/01.html )。
 拙稿の英語版も,英語版のサイトに掲載されています(http://www.rieti.go.jp/en/papers/contribution/iwamoto/01.html )。

 私はコンテンツの質を高めるところまでで能力一杯で,その後の広報・営業までなかなか手が回りません。大学のサポートも手薄です。私がファカルティフェローとなっている経済産業研究所で,研究や広報のサポートをしていただけるのはありがたいです。
 こうした研究所がいくつかあって,多数の経済学者がそこに関与しています。研究活動が大学から流出していることになるのですが,大学との体制の差を考えれば起こるべくして起こっている現象です。しかし,大学が研究する場ではなくなっている現実を直視しようとする大学人は少ないように思えます。これで大丈夫でしょうか。

(参考)
「RIETI-岩本康志」(経済産業研究所での私のページ)
http://www.rieti.go.jp/users/iwamoto-yasushi/index.html

(関係する過去記事)
日本経済新聞・経済教室『医療費増,経済にプラスも』

The Sixth Joint Conference of Seoul National University and University of Tokyo

 11月13日(金)に東京大学で開催された,The Sixth Joint Conference of Seoul National University and University of Tokyo, "Issues of Economic Policy: Theory and Evidence"で,"An Estimation of Decreases in Earnings Due to Health Deteriorations"(京都産業大の福井唯嗣先生と共著)と題した報告をおこないました。ソウル大のKeunkwan Ryu先生に討論者をしていただきました。
 このコンファレンスは,東大とソウル大の経済学部が東京とソウルで交互に開催しています。

[2009年11月18日追記]
 コンファレンスの日付を「7月13日」と大きく間違っていました。すみません。

年金論争を堕落させる『週刊東洋経済』誌

 ブログ執筆に使える時間は限られているので,世の中にあふれる質の悪い記事にいちいち反応することはないのだが,日本を代表する経済誌であるはずの『週刊東洋経済』誌10月31日号の特集「民主党でどうかわる?!年金激震!」の「Part 2 年金不信はなぜ広がった?」での経済学・経済学者攻撃はあまりにも問題が大きい。
 記事では,公的年金による批判を「年金破綻論」と呼び,公的年金について発言する多くの経済学者の名前を列挙して,その主張が間違いだと批判している。
 しかし,名前を挙げられた鈴木亘学習院大教授がブログ記事で反論している(http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/30187208.html )ように,『週刊東洋経済』誌の記事の方に多くの問題がある。批判の対象になった他の経済学者もブログやホームページをもっている方が多いので,これからさらに反論も出るかもしれない。
 個別の論点の議論は名前があがった先生におまかせするとして,私がここで問題にしたいのは,公的年金のあり方を経済学的に考えようとする経済学者の態度がほぼ全否定されていることだ。これが如実に現れるのは,世代間不公平論をめぐる以下の記述である。

「世代間不公平論は、公的年金を市場経済の領域である民間保険の考え方で眺め、そこに問題点を発見する。しかし、彼らから見れば問題である世代間格差などは、政治システムの領域である社会保障の考え方で見ると、まったく問題でないどころか、それなくして老後の所得保障という公的年金の目的を達しえないものだ。この事実に気づかない限り、世代間不公平論はこの世から消えることはないだろう」

 公的年金に対する経済学的な見方が市場経済の視点のみ,だということはない。世代間所得再分配が必要であれば公的年金が必要となるという考え方は,「政府の役割」に関する経済学の議論のなかにきちんとある。あるべき姿とは違った所得再分配が政治過程から生じることも政治経済学によって分析されている。それらを踏まえて,現行制度による再分配が合理的なものか否か,もっとよいものはないのかどうか,を議論すべきなのである。
 政策を議論する共通の土台は,市場の失敗があれば政府が介入する余地はあるが,政府の失敗がより事態を悪くする場合もある,ことである。経済学者と政策当局が政策をめぐって意見を闘わす場合があるが,議論の土台には共通の理解があった上で,役所は市場の失敗を重視し,経済学者は政府の失敗を重視している場合がほとんどである。議論によって事実判断の差が埋まれば,意見は近づく。しかし,役所が「経済学は,市場で何もかもうまくいくと勘違いしている。政治システムの領域だとわかっていない」と言えば論争に勝った,と思っているところでは,議論は実らない。公的年金をめぐっての経済学者と厚生労働省との長年の論争は,そういう場所だった。
『週刊東洋経済』誌が,例えば現行制度と鈴木教授の改革案とを共通の土台の上で比較する視点からの特集を組めば,非常に有意義な記事になっただろう。しかし,同誌は,鈴木教授の反論の掲載を拒否したようなので,現行制度の肩をもつことを選択したようだ。同誌が,経済学的な考え方を矮小化した上で,政府がおこなう所得再分配を無批判に肯定することになったのは,とても信じられない。


(参考)
「週刊東洋経済の取材姿勢に対する疑問」(学習院大学教授・鈴木亘のブログ(社会保障改革の経済学)
http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/30187208.html

『週刊東洋経済』2009年10月31日号
http://www.toyokeizai.net/shop/magazine/toyo/detail/BI/01ed426ad6b6bbffc7abd25143da8d0c/
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