2009年度予算は2次補正後で,
歳入 102.6兆円
税収 36.9兆円
税外収入 12.2兆円
国債発行 53.5兆円
となった。絶句するだけではいられないので,なぜこうなったのか,別の道はなかったのか,を整理してみよう。
麻生政権時の1次補正予算から2次補正予算にかけて,税収が9.2兆円減って国債発行が9.3兆円増えた。景気悪化で税収が減ったときに歳出を削るのではなく,赤字国債を発行することは,自動安定化装置による景気対策となるので,これは肯定できる。
歳出は,1次補正から2次補正へほぼ変化なし。私は,「過去最大の失敗」で1次補正での景気対策は過去最大の規模にこだわり,実現できる以上の効果を期待した「失敗」と評価し,事業を精査して有益なものだけにしぼるべきだと指摘した。民主党が1次補正予算の一部を執行停止にしたのは,この提言に沿っているが,追加の経済対策で帳消しになった。
1次補正予算が適切だと考える人は,事業の中身より規模を見ているから,事業の中身を吟味するために執行が遅れてしまう羽目になったことを批判するだろう。経済の落ち込みは今年の第1四半期が一番大きく,そこからは緩やかながら回復に向かっている。財政支出が必要なのは将来ではなく,今である。
もっと大きな財政刺激が必要だと考える人は,2次補正で歳出が拡大しなかったことを批判するだろう。
つまり,1次補正予算の一部執行停止と追加経済対策の組み合わせは,どのような立場からも批判されることになる愚策である。
ここまでの整理で,1次補正予算を一部執行停止し,2次補正での追加経済対策がなければよかったといえるが,かりに歳出が3兆円小さかったとしても,
歳入 99.6兆円
税収 36.9兆円
税外収入 12.2兆円
国債発行 50.5兆円
であり,やはり絶句するような財政の姿である。
今回の経済危機が予見されていなかった時点(2008年2月)での見積もりは,
歳入 88.1兆円
税収 54.9兆円
税外収入 4.0兆円
国債発行 29.1兆円
であった(財務省の「後年度影響試算」に基づく)。これと比較すると,税収が18兆円減少するという,とてつもない大きなショックに見舞われたが,それに国債増発で対応するという自動安定化装置の考え方が正しいとすると,そもそも最初の段階で30兆円近い国債発行を予定していたことが問題である。
リーマン・ショックの前までは日本経済は順調であったが,そのときに財政収支改善努力をあまりせず,経済成長による税収の伸びだけで収支改善を図ろうとしていた。2年前に,このブログの最初の記事(「財政再建は一休みします」)で批判したことである。あの時期に増税を決断して,財政収支をもう少し改善しておくべきだった。
景気の悪いときにアクセルを踏む(財政による景気刺激をする)が,景気がいいときにブレーキを踏まない(財政再建を怠る)ことで,財政赤字はここまで深刻になった。財政規律を重視する人のなかには,ブレーキをきちんと踏めないのだから,アクセルも踏むべきでない(財政による景気刺激はしない)との考えの人もいる。私は,アクセルを踏むことは否定していないが,ともかくブレーキの踏み方をきちんと覚えるべきである。
(参考)
「平成20年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」(財務省,2008年2月)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/h20/sy200123a.pdf
この資料では,国債発行額は明示的に現れない。今回の記事は,歳出と税収等の「差額」を国債発行額とみなして,整理している。
(関係する過去記事)
「過去最大の失敗」
「財政再建は一休みします」
「財政再建は一休みします(図解)」
「財政再建は誰も望まない?」
歳入 102.6兆円
税収 36.9兆円
税外収入 12.2兆円
国債発行 53.5兆円
となった。絶句するだけではいられないので,なぜこうなったのか,別の道はなかったのか,を整理してみよう。
麻生政権時の1次補正予算から2次補正予算にかけて,税収が9.2兆円減って国債発行が9.3兆円増えた。景気悪化で税収が減ったときに歳出を削るのではなく,赤字国債を発行することは,自動安定化装置による景気対策となるので,これは肯定できる。
歳出は,1次補正から2次補正へほぼ変化なし。私は,「過去最大の失敗」で1次補正での景気対策は過去最大の規模にこだわり,実現できる以上の効果を期待した「失敗」と評価し,事業を精査して有益なものだけにしぼるべきだと指摘した。民主党が1次補正予算の一部を執行停止にしたのは,この提言に沿っているが,追加の経済対策で帳消しになった。
1次補正予算が適切だと考える人は,事業の中身より規模を見ているから,事業の中身を吟味するために執行が遅れてしまう羽目になったことを批判するだろう。経済の落ち込みは今年の第1四半期が一番大きく,そこからは緩やかながら回復に向かっている。財政支出が必要なのは将来ではなく,今である。
もっと大きな財政刺激が必要だと考える人は,2次補正で歳出が拡大しなかったことを批判するだろう。
つまり,1次補正予算の一部執行停止と追加経済対策の組み合わせは,どのような立場からも批判されることになる愚策である。
ここまでの整理で,1次補正予算を一部執行停止し,2次補正での追加経済対策がなければよかったといえるが,かりに歳出が3兆円小さかったとしても,
歳入 99.6兆円
税収 36.9兆円
税外収入 12.2兆円
国債発行 50.5兆円
であり,やはり絶句するような財政の姿である。
今回の経済危機が予見されていなかった時点(2008年2月)での見積もりは,
歳入 88.1兆円
税収 54.9兆円
税外収入 4.0兆円
国債発行 29.1兆円
であった(財務省の「後年度影響試算」に基づく)。これと比較すると,税収が18兆円減少するという,とてつもない大きなショックに見舞われたが,それに国債増発で対応するという自動安定化装置の考え方が正しいとすると,そもそも最初の段階で30兆円近い国債発行を予定していたことが問題である。
リーマン・ショックの前までは日本経済は順調であったが,そのときに財政収支改善努力をあまりせず,経済成長による税収の伸びだけで収支改善を図ろうとしていた。2年前に,このブログの最初の記事(「財政再建は一休みします」)で批判したことである。あの時期に増税を決断して,財政収支をもう少し改善しておくべきだった。
景気の悪いときにアクセルを踏む(財政による景気刺激をする)が,景気がいいときにブレーキを踏まない(財政再建を怠る)ことで,財政赤字はここまで深刻になった。財政規律を重視する人のなかには,ブレーキをきちんと踏めないのだから,アクセルも踏むべきでない(財政による景気刺激はしない)との考えの人もいる。私は,アクセルを踏むことは否定していないが,ともかくブレーキの踏み方をきちんと覚えるべきである。
(参考)
「平成20年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」(財務省,2008年2月)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/h20/sy200123a.pdf
この資料では,国債発行額は明示的に現れない。今回の記事は,歳出と税収等の「差額」を国債発行額とみなして,整理している。
(関係する過去記事)
「過去最大の失敗」
「財政再建は一休みします」
「財政再建は一休みします(図解)」
「財政再建は誰も望まない?」