岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます。

2011年07月

Yahoo! ブログから引っ越しました。

keiseisaimin氏には反応しません

 keiseisaimin氏(Twitterアカウントkendochorai)には今後,反応しないようにします。以下,その理由を説明します。

 氏は,ブログ記事「岩本康志の憂鬱」(http://d.hatena.ne.jp/keiseisaimin/20110714/1310645367 )で,私のブログ記事「日銀の国債引き受けをめぐる詭弁」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/35865744.html )を取り上げている。
 私のブログ記事は,高橋教授の日銀引き受け案によって通貨膨張になるかどうか,を主眼にしている。通貨膨張の判断について,
(A)「借換債の引き受けだけに着目する」
(B)「日銀の全体での保有額に着目する」
を対比させて,高橋教授は(A)で考えているが(B)が正しい,と私は書いた(注1)。これに対して,氏は「高橋教授は別の原稿で(B)と言っている」と言う。それなら,高橋教授が矛盾したことを言っている,と考えそうなものだが,そうは思わないらしい。
 さらにTwitterで,(A)と(B)は同じだと言う(http://twitter.com/kendochorai/status/92121657354887168 )。高橋教授案は(A)では通貨膨張に当たらず,(B)では通貨膨張になる。つまり,通貨膨張するか否か,という核心事について,通貨膨張することと通貨膨張しないことは同じだ,と氏は言っていることになる。
 まともな議論ではないので,対応のしようがない。

 氏はかねてから私の発言を曲解し,多数の誤謬を含む批判を繰り返してきた。最初は,私の意図が伝わりにくければ補足説明すべきであると考え,真偽の判断がつかない第三者に誤解が広がることも避けたいので,ある程度応対していた。
 しかし,ある時期から,氏を直接相手することは避け,第三者に向けて氏の誤りを示す方針に変えた。それは,根底には何が何でも私がおかしいと主張したい悪意があることに加え,氏の資質(文章をきちんと理解していない,論理的に思考できない,自身が矛盾することに何ら抵抗がない)を知るにいたって,氏とのやりとりは何も産まないと感じるようになったからである(注2)。

 また,氏のブログでは憲法判断について「質問したい」と来るが,その直前にはTwitterで「岩本くんが法学論争に乗り出すほうがよっぽど越権行為だと思うけどw」(http://twitter.com/kendochorai/status/91473669737553920 )と私にmentionを飛ばしている。これでは失礼だろう。やんわり諭したが,「どなたか日銀の付利は憲法違反ではないのか岩本くんに聞いていただければと思います」(http://twitter.com/kendochorai/status/91807280344997888 )で氏はすませた。
「失礼しました」ぐらい入るかと期待したが,無理だった。その後も,

「読解力がなくて逃げ回っているのは誰かなw」
http://twitter.com/kendochorai/status/92121657354887168

「自分が正しいと思っているのかもしれないけど、周回遅れの議論しているから岩本君が政治家に相手にされないだけでしょw」
http://twitter.com/kendochorai/status/92122077536063488

という不快なmentionを飛ばしてくる(この種のmentionは以前から再々来る)。その社会性のなさは心配だが,私が応対し続けることで,それで良いと助長することになるかもしれない。

 氏のファンもいるだろうから,そのうちに「岩本は都合が悪くなって逃げた」とかいう噂が出ると想像がつくが,そういう噂を耳にされた方はこの記事を読んで真偽のほどを判断していただきたい。

(注1)
以下に,私のブログ記事から抜粋して,論旨を示す。
(引用始め)
高橋教授は,以下のように説明する。

「今年度、日銀の保有国債の償還額は30兆円なので、通貨膨張させない範囲で日銀引受が可能な枠は今年度予算で30兆円になっている。ということは現時点の12兆円との差額18兆円は日銀引受が可能なのだ。」

 本当に通貨膨張は起きていないのか。日銀が保有する国債は,様々な経路で増減する。償還される国債を乗換えなくても,市場から国債を買い入れることで,保有する国債は増える。高橋教授は,保有する国債が償還されるときに借換債を引き受けないと日銀の保有する国債が減少するところだけに着目する。しかし,すべての経路を合わせて日銀の保有する国債がどう変化するのかを見ると,話は変わってくる。…
 高橋教授の見方とは違って,全体での保有額に着目するのが正しい見方である。
(引用終わり)

(注2)
 一つだけご紹介しておくと,
「事実誤認と言わずになんというんですかw RT @iwmtyss 私が言ってないことが事実でないとしたら,私が事実誤認したことになるそうです。」
というツイートがある。
http://twitter.com/kendochorai/status/64152534729756672

「2011年7月18日追記]
 氏は,ここで引用したツイートを削除したようである。

日銀の国債引き受けをめぐる詭弁

 日銀による国債引き受けが相変わらず取りざたされているが,おかしな議論がまかり通っている。今回は高橋洋一・嘉悦大教授の発言をとりあげる。

(1)
 高橋教授は,以下のように言う。

「今年度予算でも予算総則第5条において、「国債整理基金特別会計において、『財政法』第5条ただし書の規定により政府が平成23年度において発行する公債を日本銀行に引き受けさせることができる金額は、同行の保有する公債の借換えのために必要な金額とする」と書かれている。
 つまり、日銀保有国債で今年度償還額の範囲内であれば、通貨膨張がないので、日銀引受が認められているのだ。具体的に今年度償還額は30兆円。今予定されている日銀直接引受額は12兆円なので、あと18兆円の日銀直接引受は既に成立した今年度予算の範囲内で、新たに国会議決する必要はない。」(「日銀総裁講演を徹底検証 国債引き受け否定は越権行為だ!」,http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110601/dms1106011507015-n1.htm

 最初の段落は事実の記述なので間違いはない。予算には,日銀はいくら引き受けるかは書かれていない。日銀が借換債を12兆円直接引き受けること(乗換)は,予算政府案と同時に作成された「平成23年度国債発行計画」に書かれている。
 かりに借換債の日銀引き受けを30兆円に変更するときには,「予算総則の文章を書き換える必要がない」ことは技術的には正しい。しかし,それをもって国会抜きで変更できるとはならない。国会は,国債発行計画に基づいて,日銀引き受けは12兆円であるという認識のもとで予算を成立させている。その国会の意思を尊重すれば,かりに30兆円に変更するならば,あらためて国会に諮るのが適当だろう。
 したがって,以下のような発言こそ,国会無視の越権行為となる。

「今年度の予算に即して誠実にいえば、「30兆円までの日銀引受は既に国会で認められているので、それを実施するかどうかは政府の判断である。それ以上の引受については、インフレの可能性などを考慮して、国会で判断してもらいたい」といったところだろう。
 復興財源としては、既に今年度予算で認められている18兆円の日銀引受で対応可能だが、白川総裁は全面否定している。日銀は国会で議決したことを否定しており、越権行為である。」(同上)

(2)
 つぎに,高橋教授は,復興債の日銀引き受けの変種を提案している。高橋案は,「復興債の日銀引き受けは通貨膨張を招く禁じ手である」という批判をかわすため,通貨膨張のない借換債の日銀引き受けを18兆円増やす。すると民間の消化枠が18兆円減るので,新規の復興債18兆円は市中で消化できる,というものである。高橋教授は,以下のように説明する。

「今年度、日銀の保有国債の償還額は30兆円なので、通貨膨張させない範囲で日銀引受が可能な枠は今年度予算で30兆円になっている。ということは現時点の12兆円との差額18兆円は日銀引受が可能なのだ。
 もし18兆円の建設国債(復興債)を発行しようとするのであれば、発行について赤字国債のような特例法も不要で、現行財政法の範囲内なので予算措置(補正予算)で発行ができる。その上で、市中消化の借換債18兆円を日銀引受として、その空いた18兆円で新たな復興債を市中消化できる。つまり、法改正ではなく衆議院での補正予算で基本的に可能な話だ。」(政府の火事場泥棒的増税に民主党内も反対勢力が結集 復興財源は33兆円捻出可能,http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110524/plt1105241543002-n1.htm

 しかし,本当に通貨膨張は起きていないのか。日銀が保有する国債は,様々な経路で増減する。償還される国債を乗換えなくても,市場から国債を買い入れることで,保有する国債は増える。高橋教授は,保有する国債が償還されるときに借換債を引き受けないと日銀の保有する国債が減少するところだけに着目する。しかし,すべての経路を合わせて日銀の保有する国債がどう変化するのかを見ると,話は変わってくる。復興債を含めた全体の国債発行が18兆円増えて,民間での全体の消化が変わらなければ,日銀の保有する国債は18兆円増える,というのは子どもでもわかる算数である。
 高橋教授の見方とは違って,全体での保有額に着目するのが正しい見方である。例えば, 2009年3月の飯田泰之・駒沢大准教授のブログ記事「米英リフレ政策発動と日本の現状」(http://d.hatena.ne.jp/Yasuyuki-Iida/20090321#p1 )での有名な指摘も,全体での保有額を重視している。飯田教授は,当時の日銀が国債買入額を増額しているのだが,全体での国債保有額は減少していることを指摘し,全体での保有額に基づいて緩和姿勢が十分でないと批判した。

 以下は余談であるが,飯田教授はゼロ金利下での追加的金融緩和について,残存期間の長い国債保有を増やすことが必要だと考えているが,筆者は「自己資本制約による将来の金融緩和へのコミットメント」で説明したように,そうした手段よりもゼロ金利の維持にコミットする時間軸政策の方が勝っていると考えており,この点では意見を異にしている。
 長期国債の買入が今ほど争点になる前は,通貨膨張か否かは日銀乗換を中心に考えればよかった。日銀による国債引き受けを禁じる財政法第5条の趣旨も,そういう視点から説明されていた。しかし,長期国債の買入に焦点が当たり始めたことで,借換と保有国債の関係が複雑になってしまったようだ。

(参考)
「日銀総裁講演を徹底検証 国債引き受け否定は越権行為だ!」(高橋洋一)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110601/dms1106011507015-n1.htm

「政府の火事場泥棒的増税に民主党内も反対勢力が結集 復興財源は33兆円捻出可能」(高橋洋一)
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110524/plt1105241543002-n1.htm

「平成23年度国債発行計画」(2010年12月24日)
http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/yoteigaku221224.pdf

「米英リフレ政策発動と日本の現状」(こら!たまには研究しろ!!,2009年3月21日)
http://d.hatena.ne.jp/Yasuyuki-Iida/20090321#p1

(関係する過去記事)
財政法第5条(日銀の国債引き受け)について

自己資本制約による将来の金融緩和へのコミットメント

大臣対応

 今日の授業は特別仕様で,与謝野馨大臣をお迎えした。
 内外の著名な政策担当者が東京大学公共政策大学院で講演される際には,関係する授業と重ねて「公共政策セミナー」と題して開催することが多く,授業担当教員がセミナーの準備をする。与謝野大臣の講演は,私の担当となった。セミナーの概要は後日,公共政策大学院のサイトで公開している(http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/seminar/index.htm )が,学生を対象にした催しであることから,学外には事前の案内はしていない。今回は,社会保障と税の一体改革案がまとまった直後ということもあって,カメラ5台を含む多数の報道陣も入る盛況だった。
 今回のセミナーの内容は報道におかませして,ここでは現場担当者としての裏話をちょっとだけ。真面目なところと真面目でないところが交じっているので,気楽に読み流してください。

 準備はだいぶ前から始まった。事前の調整で大臣のスケジュールは押さえたものの,政治情勢が不透明になってきて,中止もあり得るという状況で準備を進めた。無事に開催できて何よりだった。
 大臣が国会に呼ばれれば,もちろん国会が優先。今日は参議院の予算委員会と重なったため,直前に複数のシナリオを準備。大臣が来ない,前半だけ出席,後半だけ出席,のシナリオも用意するなど,裏方は大変。
 ついでだから,「想定外」の事態の対応も私は勝手にいろいろと妄想。会場の爆破予告,大地震,隕石またはギャオスの落下,等。

 昨日の衆議院の予算委員会は全閣僚出席。今日の参議院の予算委員会は質問者が要求する大臣が出席。国会日程が1日後ろにずれていたらアウトだった。
 前日に,質問者が出席を要求する大臣が決まってくる。セミナー前日夕刻には大臣は出席できそうということだったが,当日の朝でも事態は動いていて,はじめは若干の遅刻という連絡だった。結局,国会日程との衝突がなくなり,大臣にはフルに出席していただくことができた。

 要人の来訪では,セキュリティにも気を配る。大臣の動線は事前にチェック。大臣にはSPがつき,地元の警察署からも警察官が派遣される。今日は何事もなく日程が終了し安堵。

 田辺国昭公共政策大学院長が大臣を会場玄関で出迎える。先に大臣を応接室に通して後から入ると,大臣が辞任する事態になりかねないので,この対応が無難か。サッカーボールを蹴りますか,と当方の事前打ち合わせで質問したが,あっさり無視された。
 私も田辺院長と一緒に玄関で出迎える予定だったが,直前のSPとの打ち合わせで変更。SPの体格が良くて,玄関からの一行全員がエレベータに乗れないことが判明したため。

 私は先週,舌を噛んでしまった口内炎で舌を動かすと痛くて,ろれつが回らなかった。だいぶ回復したが,若干痛みが残っているなか,冷や汗ものの議事進行。
 そんなところがテレビに映ったら恥ずかしいので,かぶりものをしてもいいかな,と事前打ち合わせでささやいたが,あっさり無視された。

 セミナーの終わりに,公共政策大学院から講演者に記念品を贈呈するのが恒例。講演の模様を撮影した写真を漆の額に収めたもので,海外の講演者にはとくに喜ばれている。

 公共政策大学院は予算基盤が脆弱なため,万事が綱渡り操業である。スタッフ1名で今回のようなセミナーの諸々の準備を担当するため,てんてこ舞いになる。こちらの体制が整わないために,講演の希望を残念ながらお断りすることも多々ある。人的・物的資源が充実していれば,こうした機会を増やすことができるのに,というのが悩みである。

 資金獲得の努力は日々していますが,どこかの大金持ちがどんと寄付していただければいいな,という虫の良い話は教員同士の会話でよく出ます。
 東京大学公共政策大学院への寄付については,下記のページに説明があります。
「公共政策大学院へのご支援のお願い」
http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/contribution/index.htm

(参考)
「与謝野馨(社会保障・税一体改革担当大臣)による第64回公共政策セミナーが開催されました」(東京大学公共政策大学院・2011年7月7日)
http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/news/2011/07/news20110707.htm
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