拙稿「政府累積債務の帰結:危機か? 再建か?」(https://iwmtyss.com/Docs/2013/SeifuRuisekiSaimunoKiketsuRevised.pdf )を私のWebサイトで公開しました。
 以下は,拙稿の概要です。

 政府債務残高が先進国では最高の水準(対GDP比)に達したわが国の財政の将来に関心が集まっているが,拙稿では,政府債務が累増した後に再建を果たすか,デフォルトあるいは高インフレによって破綻の道をたどるのか,について歴史的にどのような経験が蓄積されてきたのかを検討している。
 先進国の多くの経済問題と同様に財政危機の問題でも第2時世界大戦後の経験が念頭に置かれることが多いが,カーメン・M・ラインハート博士とケネス・S・ロゴフ教授の『国家は破綻する』(2011年,日経BP社)は,それよりも古い時代の経験を踏まえることの重要性を指摘して,過去に遡るとともに多くの国を対象にしたデータベースを作成して,先進国もかつては財政危機を繰り返していたことを示した。
 しかし,高水準の政府債務をもつわが国の財政がこれからどう推移していくのかという問題意識は,財政危機に陥った事例を整理したラインハート=ロゴフの問題意識とは視点を異にしており,財政危機の事例の観察だけではなく,政府債務が高まった事例をすべてとらえ,その後の経路を追跡する作業が必要である。
 拙稿ではそうした作業を経て,現状のわが国のような状況から今後破綻にいたる確率を予測するモデルを推定した。きちんと対処すれば財政破綻は避けられるべきものなので,ここでの「確率」とは過去に同様の状況になった国のどれだけが破綻したのかという経験を示すものと理解していただきたい。先進国の最近時の状況は第2次世界大戦以前の過去とは異なるものだという解釈のモデルによると,現状のわが国のような状況から今後破綻にいたる確率は40%程度であると推定された。一方,現在の先進国にも過去の経験が当てはまるという解釈では,今後破綻にいたる確率は70%程度であると推定された。

(関係する過去記事)
日本経済新聞・経済教室『政府債務拡大 どこまで』