私がとりまとめに関わってきた,日本学術会議の報告「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 経済学分野」(PDF file)が29日,公表されました。2012年12月に発足した経済学委員会経済学分野の参照基準検討分科会において作成されたものですが,この分科会委員長を務めていました。
 大学教育の質保証は,学生の学習成果を重視する方向に進んでいます。EU域内で学生の交流が盛んになり,大学が相互に質保証するときに「何を教えるか」では機能しなくなり,「学生が何を身に付けたか」に焦点を当てるようになりました。これが,EUでのTuning,OECDでのAHELO(高等教育における学習成果の評価)につながりますが,経済学分野では両プロジェクトが共同で学習成果に関する報告書を作成しています。これには,学術会議が参考にした英国のQAAの参照基準(PDF file)の内容が取り入れられています。こうした世界の動きと今回の学術会議の作業の関係を整理したのが,下の図です。

分野別質保証

 参照基準には学界で大きな関心をもっていただきましたが,参照基準が目指すところが十分に伝わらずに誤解が生じたところもあったようにも思います。参照基準への理解が深まる助けとなるよう,今回の公表に合わせて,個人の立場から審議の経過と参照基準の性格について解説した文書(PDF file)を私のサイトで公開しています。同時にこちらでは,関係する資料の所在をまとめていますので,経済学教育に関心のある方の参考になれば幸いです。

 最後に,審議にご協力いただいた分科会委員や関係者,参照基準を検討し意見をお寄せいただいた諸学会など,多くの方のご努力によって参照基準がまとまったことを,この場を借りて深く感謝いたします。