『経済セミナー』4・5月号特集「経済学入門:理想のカリキュラム」に,吉原直毅・一橋大学教授との対談「経済学部教育が目指すもの」が掲載されました。私が日本学術会議で作成に関わった「大学教育の分野別質保証のための教育編成上の参照基準 経済学分野」を紹介していただく意味も入った企画でした。
新学期の時期で,これから経済学を学ぼうとする人たちに向けた企画なので,私の方からは参照基準の紹介に加え,経済学とはどういうものかを,わかりやすく説明しようとしました。説明をかなり単純化・世俗化したので,あまり格調高くないのですが,あえてそういう方向を目指しています。
その理由のひとつは,吉原教授が現在の主流の経済学の限界や批判を語る立場なので,私からは単純な形の説明をして,吉原教授の発言を引き出すねらいです。
もう一つは,対談では直接カバーされませんでしたが,最近話題になっている「G型大学・L型大学」の議論を意識しています。L型大学への提言通りに一流校以外は職業訓練校に転換してしまうと,大学で教養教育を受ける国民の比率が大幅に低下し,およそ先進国としてはあり得ない事態になります。馬鹿げた改革ですが,単に馬鹿にしていると,「ゆとり教育」のように実行されてしまうおそれがあります。
こういう提言が出てくる背景にある教養教育への不信感に対して,大学側はお高くとまらずにきちんと向き合い,職業教育以上に教養教育が有用であることを説明していく必要があると考えました(最善の方法が何かはわかりませんが,とりあえず単純化・世俗化することを試してみました)。
日本学術会議が参照基準の作成作業に入る前に教養教育のあり方について議論がされ,「(提言)21世紀の教養と教養教育」(PDF file)や「(回答)大学教育の分野別質保証の在り方について(第二部 学士課程の教養教育の在り方について)」(PDF file)が出されていたのは,そういう意識があったと考えています。経済学分野の参照基準でも,学生が経済学を学ぶことで身に付くことが社会に出たときにどのように活かされるのか,を説明することを重要な使命としています。