岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます。

身辺雑記

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『現代経済学の潮流2014』はしがき

 日本経済学会の日本語機関誌『現代経済学の潮流』のはしがき冒頭には,定型文が使われています。2014年版では,出版社からの提案によって,定型文を若干,変更しました。

 第1は,学会を紹介した冒頭部分です。長文で読みにくいので,文章を分けて記述するようにしました。

(2005~2013年版)
「日本経済学会(1997年に理論・計量経済学会から名称変更)は,1968年4月に理論経済学会(1934年に日本経済学会として発足,1949年に名称変更)と日本計量経済学会(1950年に発足)を統合し新会則のもとで発足し,現在では日本を代表する経済学の総合学会になっている
(2014年版)
「日本経済学会は,日本を代表する経済学の総合学会である。前身になったのは,理論経済学会(1934年に日本経済学会として発足,1949年に名称変更)と日本計量経済学会(1950年発足)という2つの学会である両学会は1968年に統合され,新会則のもとで理論・計量経済学会が発足した。1997年に日本経済学会と改称され,現在に至っている。」

 なぜ古い文章が2005年から始まることを知っているのかといえば,私が編者のときに当該箇所を変えたからです。それ以前は,以下のようになっていました。

「理論・計量経済学会は,1934年に創立された日本経済学会(1949年に理論経済学会と名称を変える)と,1950年に創立された日本計量経済学会を統合して,1968年の4月に新会則をもって発足したものである。それまで一部の日本の経済学者によって発行されていた学術雑誌『理論経済学』は,1959年に理論経済学会と日本計量経済学会の学会誌とすることが決定され,『季刊 理論経済学』と名称を改め1994年度まで発行されてきた。(中略)理論経済学会は,1997年度から日本経済学会と名称を改め,名実ともに日本を代表する経済学の学会となった。」

 中略以前の文章は『現代経済学の潮流』創刊時からの定型文です。日本経済学会に改称後もしばらくは,「理論・計量経済学会は・・・」ではしがきが始まっていたことになります。「日本経済学会は・・・」で始まるべきだろうと,私が編集権を握ったときに書き換えました。
 当学会は沿革を1934年の日本経済学会発足から始めていますが,「日本経済学会→理論経済学会→理論・計量経済学会→日本経済学会」のように書いてしまうと,日本計量経済学会が傍流として扱われてしまいます。1968年の理論・計量経済学会の発足を対等合併とするように書くには,文章が複雑になることが避けられません。

 第2は,機関誌の位置づけです。

(2005~2013年版)
「1959年に理論経済学会と日本計量経済学会は,それまで一部の日本の経済学者によって発行されていた学術雑誌『理論経済学』を学会誌とし,『季刊 理論経済学』と名称を改めて,東洋経済新報社から発行を続けてきた。」
(2014年版)
「1950年以来,理論経済学会によって発行されていた学術雑誌『季刊理論経済学』は,1960年より理論経済学会と日本計量経済学会の合同学会誌とされ,査読制度が導入された。1968年の両学会統合にともない,同誌は,理論・計量経済学会の学会誌となった。」

 2005年の変更は第1の変更に合わせて文章を調整したものでしたが,内容は創刊時のものをそのまま引き継いでいます。2014年の変更は,合同学会誌とする以前の内容を変えています。これは,『日本経済学会75年史』(有斐閣刊,2010年)の記述に合わせたものです。

 定型文が大きく変わった2回の場面にたまたま居合わすことになったので,ささいなことですが記録に残しておきます。

『現代経済学の潮流2014』

 告知が遅れましたが,私が共編者となった『現代経済学の潮流2014』が東洋経済新報社から刊行されました。日本経済学会の日本語版機関誌として,1996年から毎年出版されています。出版社の案内から,目次を引用します。

第1章 非伝統的金融政策の効果:日本の場合──本多佑三
第2章 法とマクロ経済──柳川範之
第3章 景気循環における異質性と再配分ショック──小林慶一郎
第4章 学校選択問題のマッチング理論分析──安田洋祐
第5章 高年齢者雇用安定法の影響分析──近藤絢子
第6章 日本の経済学術誌の将来性:編集長の視点(パネル討論1 )
     ──芹澤成弘・伊藤秀史・大垣昌夫・福田慎一・矢野 誠
第7章 日本国債(パネル討論2)
     ──北村行伸・井堀利宏・岡崎哲二・齊藤 誠・二神孝一

 過去,2005,2006,2007年版では学会から指名される編集委員として編者になりましたが,今回は2013年度秋季大会プログラム委員長としての参加になります。編者は原稿のチェック,はしがき執筆等の周辺で本を支えるのが仕事ですが,今回の役割では第1章(会長講演),第2章(石川賞講演)以外の内容の決定に携わります。第3章から第5章に収録される特別報告はプログラム委員長と学会担当理事で決め,第6章・第7章に収録されるパネル討論はプログラム委員会で決める慣例です。
 学会の一般報告は11会場同時開催でしたが,特別報告の時間帯は3会場のみ,パネル討論の時間帯は2会場のみでの開催です。そのため,できるだけ多くの会員がどれかの会場に足を運びたいと思うように,内容を選ばないといけません。特別報告はミクロ,マクロ,実証分析という色分け,パネル討論は学界の課題,政策の課題という色分けで,学会員の多様な関心に応えるようにしました。
 同時に,書籍としてまとまったときに,学会員以外にも買っていただける内容にするという使命もあります。私もそうでしたが,おそらく歴代のプログラム委員長も苦労されたことと思います。
 ひとつのテーマに集中した本ではないですが,研究者がいま関心をもっている分野を俯瞰できるので,経済学の先端に触れたい学生・社会人にとっても有益だと思います。また,学会員への配布で確実に部数がさばけているため,本体価格2,400円と,専門書としてはお買い得です。

日本経済新聞・経済教室「財政運営の前提に甘さ」

 7月9日の日本経済新聞朝刊の経済教室欄に拙稿「財政運営の前提に甘さ」が掲載されました。「成長戦略の総括」シリーズの第2回になります。
 拙稿は以下のように,今後の財政運営の戦略と関係しています。

 6月に骨太の方針と改訂成長戦略がまとまり,今年後半には来年度の消費税率引き上げに加えて,2020年度までに国と地方の基礎的財政収支を黒字化する目標をどう達成するか,という財政運営の戦略を検討する必要がある。その際の経済成長率の設定は昔から大きな争点であり,小泉政権後期には「上げ潮」派と「財政タカ」派の対立がずいぶん騒がれた。将来の成長率は不確定なので,どちらが正しい見通しなのかを事前に問うても答えはない。
 財政運営の前提として,高めの成長率(安倍政権での「中長期の経済財政に関する試算」[2014年1月20日,内閣府]では「再生ケース」)をとるのか,低めの成長率(「参考ケース」)をとるのかは,以下のような違いになる。
 第1は,財政健全化のスピードの違いである。経済状況が良ければ税収が増えて財政収支は改善し,目標達成時期が早まるが,経済状況が悪ければ目標達成は遅れる。「再生ケース」で目標達成を図ると,高めの成長率が出た場合には2020年度に目標が達成されるが,低めの成長率が出た場合には達成は2020年度より遅れる。「参考ケース」で目標達成を図ると,高めの成長率が出た場合には2020年度よりも早く目標が達成され,低めの成長率が出た場合には2020年度に目標が達成される。
 第2は,目標達成の目算の違いである。「再生ケース」で目標達成を図ると,高めの成長率が出た場合には目標が達成できるが,低めの成長率が出た場合には目標が達成できない。「参考ケース」で目標達成を図ると,高めの成長率が出た場合も低めの成長率が出た場合も目標は達成される。

 どちらの戦略が良いか。私見では,以下のような理由で「参考ケース」で目標達成を図るのが良い。
 第1に,財政健全化目標の達成は,現在のような高債務水準で引き続き国債を市場で消化するために,市場に対して約束するものである。低い成長率が出る可能性が多分にあると,「再生ケース」で目標達成を図れば目標が達成できない可能性が多分にあるので,約束になっていない。
 第2に,高齢化が進み,社会保障費が今後も増加するので,財政健全化のペースを速めるほど,将来の負担を減らすことができ,負担の平準化を図ることができる。

 逆に,「再生ケース」が良いとなるには,高い成長率が確実に見込まれる,財政健全化のペースは遅い方が良い,という根拠が必要だ。前者について,成長戦略によって高い成長率が確実に見込まれるか,を検討したのが今回,日本経済新聞に寄稿した拙稿である。
 そこでは成長が確実に見込まれないという結論になっており,成長戦略に否定的な印象を与えるかもしれないが,成長戦略に反対しているわけではない。「参考ケース」で目標達成を図ることは,低い成長率が望ましいことを意味するわけではないからだ。
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