18日に,今年度のグローバルCOEの選考結果が発表されました。経済学(経営学をのぞく)の分野は,昨年度までの21世紀COEに選ばれていた8つの拠点のサバイバル競争でしたが,一橋大,阪大,慶大,早大の4つが選ばれました。一橋大は2つの21世紀COEを1つにまとめ,京大が阪大,慶大の企画に連携したので,東大と神戸大のCOEが淘汰される形になりました。
今年度の申請では,私は学際・複合・新領域分野のジェロントロジーのCOE企画の事業推進担当者となっていて(あえなく学内選考で落選),東大の経済学グループのCOE企画には参加していません。しかし,他人事でもないので,少し感じたことをのべます。
経在学の分野での東大の研究活動は他大学をしのいでいるはずですが,COEの選考基準は別のところにあった,ということがいえると思います。
第1に,機関の研究実績の評価は所属する個人の業績の合計で見るのが通常ですが,21世紀COE・グローバルCOEでは,メンバーが協同して何をやるのかが重視されているように見えます。分野によるのかもしれませんが,少なくとも経済学の分野では,こういう基準で大きな資金を選択的に配分するのは,研究水準の向上には役立たないと思います。学部・研究所は経済学の幅広い領域を教員で分担してカバーしますが,分担は個人単位であり,組織運営は水平的にする方がうまくいくと私は考えています。COEは無用な協働関係,上下関係を教員組織に持ち込み,運営に歪みが生じます。
東大では,COEでも個人をしばらないやり方をとりましたが,喩えればソロイストがそれぞれ超絶技巧を披露してもハーモニーが破綻しているような形に見えたのかもしれません。グループとして統率のとれている方が,事業計画書やプレゼンの見栄えはいいし,審査員の印象もいいでしょう。しかし,統率される方は窮屈になりますので,メンバーにとっては,COE獲得競争というのは我慢比べです。21世紀COEの期間の途中で私は一橋大から東大に移籍したので,両方のCOEを体験しましたが,一橋大の方が統率がとれており,中間評価も高評価でしたが,1メンバーとしては窮屈な思いもあり,東大のCOEの方が居心地が良かったです。
第2に,1つの大学が獲得できるCOEの数に枠がはめられ,東大経済学COEは他大学の経済学COEと競い合うのではなく,東大内の社会科学COE企画との競い合いに負けた,という見方があります。
COEは少数の機関に重点的に資金を配分するという「選択と集中」の理念から出発しているはずなので,そのような枠があることは矛盾です。審査委員会は公式には認めないかもしれないので,そのように推測している人間が私のみならず複数存在するという言い方にしておきます。
今回の選考結果によって,東大の経済学は資金面で不利な状況に立たされましたが,今後どういう影響があるでしょうか。
研究活動は,個々の研究者がきちんと資金を獲得していけば,それほど影響はないと思われます。COEを獲得した大学が東大の教員を引き抜くようなことはあまり考えられません。そうした目的へのCOEの資金の使用は考えてなさそうだからです。
しかし,博士課程院生の経済的支援(RA,TA経費等)にCOE経費の大きな部分が使われているので,大学院生の待遇に差がつく可能性があります。それによって,東大の院生が他大学のCOE研究員に引き抜かれたり,さらに,今後の入学生が,経済的支援を得られやすいという理由で,東大以外の大学を選択するかもしれません。ただし,東大全体として大学院生の支援を強める取り組みを進めており,COEの有無でそっくり差がつくわけではありません。さらに,幸か不幸か書類審査で早々に落選したため,経済学グループでは,新たな資金獲得の算段に早くからとりかかっています。よい結果が出ればご報告します。
(参考)
「平成20年度グローバルCOEプログラム審査結果」(日本学術振興会)
http://www.jsps.go.jp/j-globalcoe/04_shinsa.html
今年度の申請では,私は学際・複合・新領域分野のジェロントロジーのCOE企画の事業推進担当者となっていて(あえなく学内選考で落選),東大の経済学グループのCOE企画には参加していません。しかし,他人事でもないので,少し感じたことをのべます。
経在学の分野での東大の研究活動は他大学をしのいでいるはずですが,COEの選考基準は別のところにあった,ということがいえると思います。
第1に,機関の研究実績の評価は所属する個人の業績の合計で見るのが通常ですが,21世紀COE・グローバルCOEでは,メンバーが協同して何をやるのかが重視されているように見えます。分野によるのかもしれませんが,少なくとも経済学の分野では,こういう基準で大きな資金を選択的に配分するのは,研究水準の向上には役立たないと思います。学部・研究所は経済学の幅広い領域を教員で分担してカバーしますが,分担は個人単位であり,組織運営は水平的にする方がうまくいくと私は考えています。COEは無用な協働関係,上下関係を教員組織に持ち込み,運営に歪みが生じます。
東大では,COEでも個人をしばらないやり方をとりましたが,喩えればソロイストがそれぞれ超絶技巧を披露してもハーモニーが破綻しているような形に見えたのかもしれません。グループとして統率のとれている方が,事業計画書やプレゼンの見栄えはいいし,審査員の印象もいいでしょう。しかし,統率される方は窮屈になりますので,メンバーにとっては,COE獲得競争というのは我慢比べです。21世紀COEの期間の途中で私は一橋大から東大に移籍したので,両方のCOEを体験しましたが,一橋大の方が統率がとれており,中間評価も高評価でしたが,1メンバーとしては窮屈な思いもあり,東大のCOEの方が居心地が良かったです。
第2に,1つの大学が獲得できるCOEの数に枠がはめられ,東大経済学COEは他大学の経済学COEと競い合うのではなく,東大内の社会科学COE企画との競い合いに負けた,という見方があります。
COEは少数の機関に重点的に資金を配分するという「選択と集中」の理念から出発しているはずなので,そのような枠があることは矛盾です。審査委員会は公式には認めないかもしれないので,そのように推測している人間が私のみならず複数存在するという言い方にしておきます。
今回の選考結果によって,東大の経済学は資金面で不利な状況に立たされましたが,今後どういう影響があるでしょうか。
研究活動は,個々の研究者がきちんと資金を獲得していけば,それほど影響はないと思われます。COEを獲得した大学が東大の教員を引き抜くようなことはあまり考えられません。そうした目的へのCOEの資金の使用は考えてなさそうだからです。
しかし,博士課程院生の経済的支援(RA,TA経費等)にCOE経費の大きな部分が使われているので,大学院生の待遇に差がつく可能性があります。それによって,東大の院生が他大学のCOE研究員に引き抜かれたり,さらに,今後の入学生が,経済的支援を得られやすいという理由で,東大以外の大学を選択するかもしれません。ただし,東大全体として大学院生の支援を強める取り組みを進めており,COEの有無でそっくり差がつくわけではありません。さらに,幸か不幸か書類審査で早々に落選したため,経済学グループでは,新たな資金獲得の算段に早くからとりかかっています。よい結果が出ればご報告します。
(参考)
「平成20年度グローバルCOEプログラム審査結果」(日本学術振興会)
http://www.jsps.go.jp/j-globalcoe/04_shinsa.html